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2023.10.23
#03「AT|OM」
alk phenixの2023AWで描いた宇宙。
宇宙という無限大もあれば、宇宙服という緻密性もある。
いわば、拡大と収縮という相反するワード。
ただ、alk phenixで描くは可能性という、あくなき探求心の表れ。
プロダクトとは、いつの時代もリスペクトとリスペクトが交錯するもの。
宇宙というテーマを持たせた2023AWについて掘り下げた。
インタビュアー(以下、イ)
今回は宇宙ということで、タイトルも「AT|OM」ですが、こちらはどういった意味合いを持っているのでしょうか?
川久保(以下、川)
サンスクリット語でAT(ATATI)=歩く、OM=宇宙。それらが縦棒で仕切られていて、原子のATOMつまり宇宙なんです。
このテーマを構想したのは2022AWをデザインしている段階では既に生まれていて、宇宙でも着れるような機能性を持たせたいなとか、そういったディティールを取り入れたいなと思っていました。
軽量・保温・気密性を念頭に、効率よく冬を快適に過ごせる機能服を作りました。
イ:
なるほど。
宇宙に続くとなると、少し禅的に発想も感じられますね。
機能美もさることながら、色も相まって、前回よりもストイックな印象を受けました。
川:
ミニマリズムと言ってしまえばそれまでなのですが、正直意識しました。
単にミニマリズムというワードは、シンプルと似て非になる言葉だと感じています。
alk phenixでは部分的にですが、ジップが表に見えない仕様にするなどの細部にまで意識を這わすことを心掛けています。
僕の中では、これが機能性のヴィジュアライズだと思っていて、シンプルではなくプロダクトとしてミニマルに見せるということに徹しています。
コンシールファスナー(表に出ないファスナー)などは最たる例なのかもしれませんが、まさにそれを具現化していて。
ミニマルということに対して、妥協をしたくなかったんです。
イ:
機能性のヴィジュアライズとは、あまり聞きなれない言葉ですが、言葉が軽く扱われる現代において、非常に突き刺さりました。
パッと見でミニマルというのは簡単ですが、言語化出来るミニマムというのは機能服ならではなのかもしれませんね。
川:
ドローコードも密閉するものと捉え、酸素のない宇宙をイメージしたりなど、ディティールや付属から連想させるということは色々と考えました。
建築物から学ぶこともあったり、最近ではジャスパー・モリソン氏のプロダクトなどにも影響を受けることがあります。
昔から好きだったんですが、彼の理にかなったプロダクトを再認識するタイミングでもありました。
イ:
シーズンルックを見た時に、パターンメイクが面白い服が多いと思いました。
フードやフラップなどが妙に印象に残るというか。
川:
フードはまさにで、宇宙服のドーム型のヘルメットを意識しています。
レトロな時代から引っ張ったので、少しかわいらしさもありなんですが。
ダウンに見られる外付けフラップは、呼吸の二酸化炭素の量などを調整する、酸素制御アクチュエーターを付けていた時代を意識しています。
月面着陸をした時代のものなのですが、あれぞみんなの思い描く宇宙服だなと思っていて。
そこから着想を得ましたが、地球ではさすがに不要なので、ティッシュを入れたりするイメージで作ってます。
実際に入りますし(笑)
イ:
実用性は何より大切です(笑)
深いところに行くようで、宇宙という広い世界に飛び立ったalk phenixの2023AWでした。
着想源の面白さもさることながら、alk phenixという無限大の可能性も感じられる不思議な時間でもありました。
地に足を着けさせず、むしろ宇宙空間の様に浮かび上がった世界観。
そして付随して理にかなったプロダクト。
空いていたピースが埋まるような、とてもしっくりした線を感じました。
川:
宇宙服と言いながらも、スキーウェアを作る工場で作っています。
なので、このままスキーも出来るようにしていたり、きっと着てもらって初めてその世界観に浸ってもらえるかと。
曖昧さはなく、全てが繋がっていく感覚を体感して欲しいです。
歩く、浮く。
浮くことすらも宙を歩いていることになるのかもしれない。
alk phenixという無限の可能性を感じつつ、そっと目を閉じて描いた宙を旅する為の服。
有限の刻の中。
万物が持つ平等に寄り添うは、alk phenixなのかもしれない。
Text:Takahiro Kudose(TEENY RANCH)
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