JOURNAL

  • 2023.6.7#01「歩く」

    「歩く」
    人間の日常行為である歩くという行為に焦点を当てたプロダクトを表現するalk phenix。
    その歩くという長い旅路の中でどこに向かい、作り手は何を思うのか?
    この場で、alk phenixの道を紐解いていきます。
    今回は2023Sを象徴する、ken_sugawara氏のグラフィックとalk phenixの関連性。
    デザイナー川久保氏に口を開いてもらった。
    #01「歩く」
    インタビュアー(以下、イ)
    今回の2023SSでは、従来のalk phenixとは異なり、色彩があり、かつグラフィカルなコレクションを発表されていました。
    まずはken_sugawara氏と取り組むことになったキッカケはなんだったのでしょうか?
    川久保(以下、川)
    彼とは日常的に連絡を取り、食事をはじめ、お互いのことを話す機会が多い仲でした。
    何気ない時に023SSのイメージの話をしたら、何か一緒に出来たらいいねと話したのがキッカケです。
    イ:
    ではある意味、必然の流れで生まれた一種のコラボレーションだったわけですね。
    どのようにリクエストを出されたんですか?
    川:
    テーマが「旅の恥はかき捨て」だったのですが、旅をしていくに連れ、高揚を生み、精神的に異常を来す程の高揚を表現したいと話していました。
    洋服に精神的高揚を加えたいというのは、口では話せてもなかなか形にするのは難しいと思っていたのですが、彼のグラフィックを見た時に最初からアンサーをもらえました。
    色のリクエストはこちらで出していたのですが、僕の描く「恥」というのは、旅先では全てが一期一会の環境なんです。
    服が汚れていようが、破けていようが、そこで出会う人たちは恐らく二度と会うことはありません。
    ただ僕が手掛けているのはテックウェア。
    破れて浸水では、本来のテックウェアの目的を果たせない。
    それをマーブル調のグラフィックで、さも汚れのように描くことで、テックウェアとしての限られた規律の中で最大限の表現を描けることに気付きました。
    それを叶えてくれたのが、今回のグラフィックでした。
    イ:
    なるほど。
    はみ出したくてもはみ出せない中で、何を持って異端とするか。
    グランジとパンクが混在するようなマインド、とても心がざわめきますね。
    今回の説明にある、アイデンティティーの更新というのも興味深かったです。
    alk phenixのアイデンティティーはもちろん歩くだと思うのですが、そこからの更新となるとどういうイメージなのでしょうか?
    川:
    アイデンティティーの根幹にはある「歩く」は変わりません。
    むしろここはぶれたら終わりだと思うんです。
    ただぶれるというよりは、変化に対して向き合っているという意味での更新です。
    日常の中で車や走ったりでは、景色の移り変わりが早すぎて見えていないこと、気付かないことがたくさんあります。
    しかし、歩く速度によっては街の変化に気付くことがあります。
    建物の建て替え、ちょっとした看板の配置の変化、ゆっくりでないと気付かない、気付けないことがあります。
    自分を取り巻く環境の微細の変化が、自分の見る景色の変化になり、しいてはそれが自信の脳の変化にも繋がります。
    根幹は変わらずとも、その変化が日々の自分を形成し、そして未来の自分を構築していく。
    歩くは日常行為でありながら、変化を求める人にとってはもはや欲求の1つだと思うんです。

    #01「歩く」
    イ:
    歩くということから、変化を経て、成長へと繋がっていくのですね。
    欲求というところまで辿り着く、これはもはやとても前向きな精神異常のような気がします。
    日常も捉え方によって、プラスにもマイナスにもなると僕も思います。
    グレートジャーニーももしかしてそうしてなったんですかね?と今思ってしまいました。
    川:
    歩く(移動する)というのは、人間の進化にとって必要過程だったんでしょうね。
    その変化が意思を持つこと、自立することに繋がっていくんだと思うんです。
    イ:
    洋服の話をしていましたが、つい精神世界にトリップしてしまいました。
    それほどに2023SSのテーマが掘れば掘るほど面白い証拠だと思います。
    川:
    自然に受け止め、変化を恐れず。
    少し見方を変えただけで、その洋服も自分の中で更新されるのかもしれません。
    押しつけではなく、意味を理解して自分の着るものを選択していく。
    それでalk phenixの洋服だったら何よりも嬉しい。
    僕はシンプルにそれを日々思っています。
    イ:
    つい保守的になってしまうのが人間ですが、いつまでもチャレンジ精神を忘れず、そして向き合うことが大切ですね。
    alk phenixの洋服を選択する、そこにも何か自分なりの答えを生み出していくことが楽しかったりしますよね。
    快適に過ごす為、身を守る為などテックウェアには必ず意図が合って生まれます。
    キッズに戻ったような気持ちで聞き入ってしまいました。
    次回は素材などについても聞いてみたいと思います。
    今回はありがとうございました。
    当たり前は当たり前ではない。
    時代は流れ、必ず形を変える。
    ただ消滅を除いては、生き残るものは変化し、成長を遂げていく。
    それが維持と言われることもあれば、進化と言われることもある。
    alk phenixが表現した模様は、「変わることを恐れるな」と強いメッセージとしても受け止められる。
    移り行く時代の中で、alk phenixが描く変化という長い旅はまだまだ続くのであろう。
    その予兆を感じた。
    Text:Takahiro Kudose(TEENY RANCH)